なぜ、税務署は相続があったことを知っているのか?
相続が発生してから3~4月程度経過すると、税務署から「相続税の申告のご案内」なるものが届く場合があります。もちろん、相続税の申告を促すためにこの書類が送られているのですが、普段税務署と付き合いのない方のご自宅にこの書類が届くと、驚かれることも珍しくありません。同時に、不思議に思われる方も多いと思います。「なぜ、税務署は相続があったことを知っているのだろう?」と。
相続税法第58条では、「市町村長その他戸籍に関する事務をつかさどる者は、死亡又は失踪そうに関する届書を受理したときは、当該届書に記載された事項を、当該届書を受理した日の属する月の翌月末日までにその事務所の所在地の所轄税務署長に通知しなければならない。」と規定されています。
通常、相続が発生すると、被相続人の親族等が市町村役場に「死亡届出書」を提出することになりますが、この死亡届出書が相続税法第58条に規定する「死亡又は失踪そうに関する届書」にあたることから、市町村長から所轄税務署長に相続が発生した旨の通知が行われることになります。したがって、税務署は相続が発生したことを知っていることになる訳です。
相続税法第58条に基づき、相続発生の事実を税務署が知ると、その被相続人について相続税の申告が必要かどうかを、生前の確定申告の情報や、同族法人の申告内容、膨大なデータが蓄積されているKSKシステム(国税総合管理システム)などを活用することで判断していくことになります。相続税の申告のご案内が送られてきたということは、税務署は、「相続税申告が必要かもしれない」と認識していることになります。
この相続税の申告のご案内には、「相続についてのお尋ね(相続税申告の簡易判定シート)」と呼ばれるものが同封されています。この用紙を活用し、遺産総額を簡易的に把握してみましょう。もし、この作業で把握した遺産総額が、遺産に係る基礎控除額を超える場合には、相続税の申告義務があることになります。申告期限に間に合うよう準備が必要になりますので、早目に動き出す方が良いでしょう。